外国人技能実習制度とは? 現状と問題について解説

現在日本で働く外国人労働者の数は170万人以上。
その中で技能実習生の割合は23.3%40万人以上になります。
また、産業別の外国人雇用事業所の数は製造業が最も多い状況です。

在留資格別外国人労働者の割合

出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

産業別外国人労働者の割合

出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ

今回は日本の製造業を支える技能実習制度についての解説と、
一方で同制度の問題点についても言及します。

目次

■外国人技能実習制度の歴史

・技能実習制度の誕生は1993年

1960年代後半
海外の現地法人などの社員教育として行われていた研修制度が評価されはじめる。

1982年
日本の企業が海外から本格的に外国人研修生を招集し始める。

1990年
「監理団体」による外国人研修生の受け入れが始まる。(当時は技能実習生ではなく研修生と呼んでいました)

1993年
法務大臣により「技能実習制度に係る出入国管理上の取扱いに関する指針」が出て技能実習制度が始まる。(技能実習生の呼び名が誕生)

2010年
入管法が改正され、技能実習生用の在留資格として「技能実習」が設けられる。

2016年
「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が定められる。

2017年
技能実習法をしっかり守って実習が正しく行われるように、「外国人技能実習機構」が設立される。

 

監理団体とは
技能実習生を受入れ、その活動及び受け入れ企業へのサポート等を行う非営利団体です。 具体的には企業の依頼を受け、技能実習生の募集、受入れまでの手続きや現地での面接、受け入れ後は各企業が適正な技能実習を行っているかどうか、監査と指導を行っていきます。
外国人技能実習制度は日本の人手不足を安く解決するためのものでは無く、開発途上国の「人づくり」をすることが主な目的です。目的に反してこの制度が利用されないように、技能実習法では2つの基本理念を掲げています。
1. 技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと
2. 労働力の需給の調整の手段として行われてはならないこと

■技能実習制度の仕組み

技能実習生の受け入れ方は大きく分けて2つあります。企業単独型と団体監理型です。

・企業単独型
日本の企業が、関係会社や取引先の職員その他の企業が単独で現地の人材を受け入れて実習を実施するのが企業単独型です。

・団体管理型
監理団体が受け入れ、その団体の会員企業などで実習を実施するのが団体監理型です。

多くの場合は団体監理型で実習生を受け入れており、送出機関、実習を行う受入企業、監理団体、外国人技能実習機構、そして地方出入国在留管理局などが連携して、技能実習を実現しています。

・団体管理型の仕組み

◆送出国

・送出機関
候補生の選考←希望者の応募

↓(送出機関と監理団体との契約)↑

◆日本

・監理団体
(実習生への講習・実習支援:技能実習・日本語教育・生活、安全衛生等)

↓指導・支援(監理団体から受入企業へ)

↑受入申し込み(受入企業から監理団体へ)

・受入企業(実習計画作成・実習実施)

雇用契約

・実習生

■技能実習の流れ

技能実習はいくつかの期間に分かれ、期間ごとに日本に滞在するための資格(在留資格)が異なります。各期間の終わりに行われる試験に合格することで、次の実習期間に必要な在留資格を取得することができます。

・講習

技能実習生は母国でリクルート後、企業に配属される前に、現地の訓練校と日本入国後の研修で日本語をはじめ日本での生活に必要な、日本のルールや規則などを勉強します。

・技能実習1号

技能実習生は入国時に出入国管理局から、1年間滞在が許される在留カードをもらい、講習修了後企業に配属されます。この最初の1年を技能実習1号と言い、期間中に実技と学科の試験(技能検定試験 基礎級)を受けます。2回不合格だと在留資格を失い実習は続けられません。

・技能実習2号

技能検定試験(基礎級)の合格者は、続く2年間技能実習2号として実習できます。その後も実習するには、技能実習2号の期間終了前に技能検定試験3級に合格し、所定の手続きをして、技能実習3号の資格を取得します。

・技能実習3号

技能検定3級合格者(少なくとも実技試験に合格)は、技能実習3号に進むことができます。ただし、技能実習2号の修了後に技能実習3号の実習開始前又は開始後1年以内に1ヵ月以上の一時帰国が必要です。

■技能実習生の受け入れに必要な準備

技能実習生を受け入れるには、3種類の責任者を決めること、そして技能実習生が生活しやすい環境を用意することが必要です。

・技能実習指導員
技能実習生に仕事を教えて、彼らが技術や知識を学ぶのを助けます。その仕事内容に詳しいベテラン職員が担当します。

・生活指導員
言葉や価値観が日本とは異なる技能実習生に、生活方法や日本の習慣などを教えて、技能実習生の日本での暮らしを支える指導員です。

・技能実習責任者
技能実習指導員や、生活指導員など、技能実習にかかわる職員のリーダーとして、技能実習を安全で実り多いものにする指定講習を受けた責任者です。

■受入可能な技能実習生の人数

ひとつの企業が受け入れることができる技能実習生(年間)は、従業員の数によって異なります。たとえば従業員が30人の会社であれば3人まで技能実習生を受け入れることができます。さらに、優秀な技能実習生を育成して優良企業と認められると、この2倍の人数まで受け入れが可能になります。なお、条件を満たせば個人事業主でも受け入れは可能です。

■優良な企業(実習実施者)の基準

「優良な実習実施者」の認定を受けるには、外国人技能実習機構へ「優良要件適合申告書」を提出し、「優良な実習実施者の基準」をクリアしなければなりません。

優良な実習実施者の基準については、以下の項目で120点満点の6割以上の点数を獲得した場合に適合することとされます。

・技能等の修得等に係る実績(70点)
過去3年間の基礎級、3級、2級程度の技能検定等の合格率等
・技能実習を行わせる体制(10点)
過去3年以内の技能実習指導員、生活指導員の講習受講歴
(講習の整備から1年までは配点なし)
・技能実習生の待遇(10点)
第1号実習生の賃金と最低賃金の比較技能実習の各段階の賃金の昇給率
・法令違反・問題の発生状況(5点)
過去3年以内の改善命令の実績、失踪の割合。過去3年以内に実習実施者に責めのある失踪の有無
※違反等あれば大幅減点
・相談・支援体制(15点)
母国語で相談できる相談員の確保。他の機関で実習継続が困難となった実習生の受入実績等
・地域社会との共生(10点)
実習生に対する日本語学習の支援。地域社会との交流を行う機会、日本文化を学ぶ機会の提供

 

* 過去3年間の3級程度の技能検定等の実技試験の合格者を3名以上だす
* 法令違反や実習生の失踪等、問題を発生させない
* 生活指導員、技能実習指導員の講習受講等

 

■技能実習制度の問題点

・実習生の渡航前費用・借金問題
多くの実習生候補は渡航前費用を支払うことができないため、多額の借金をしている。さらに、保証金や違約金の契約を結び、家族などを保証人に入れさせられるケースも存在する。

・転職の不自由
実習生には職場移動の自由が与えられてこなかったということである。職場移動の自由が制限されているということは、運悪く悪質な企業に当たってしまった場合に対抗手段が著しく限定されるということを意味する。
もし渡航前の借金が残っている場合には、帰国という選択肢も実質的に奪われることになり、実習先が悪質でも従属せざるを得ない状況に陥ってしまう。

・社会的孤立
実習生の中には日本語がそこまでできない状態で来日する者も少なくない。
また、基本的な労働法や労働基準監督署、労働組合の存在など、日本で労働者としての権利を行使するために必要な制度や組織についての知識も持っていない場合が多いのが現状。

・解決に向けて

2017年の技能実習法によって「外国人技能実習機構(OTIT)」が創設。
実習生の相談に応じ、転籍先の調整・支援等も行う。

■まとめ

現状、中小企業を中心に大切な労働力の支援となっている技能実習制度。
開発途上国の「人づくり」という本来の目的のもと、
受入企業と実習生の双方がメリットを十分に享受できることが理想ですね。
技能実習制度についてのご参考になれば幸いです。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

IT業界で製造領域に携り7年

業界知識や課題、採用、転職、お金にまつわることなど、
製造業界で働くあなたや、製造業界に関わるあなたへ
知っておきたい情報をわかりやすくお伝えします
「働くあなたを元気にしたい」をモットーに投稿していきます

コメント

コメントする

目次