【物価上昇が製造業にもたらす影響とは?】その原因とインフレ・円安の関係も解説します!

最近、筆者も買い物をすると感じる「物価上昇」。コンビニやスーパーの日用品や食料品だけでなく、電気代などのエネルギーやユニクロで販売されている衣類まで軒並み商品の価格は上がっています。

私たちの生活に大きな影響を与える物価上昇について、そもそもなぜ起こっているのか?
製造業界へ与える影響について解説します!

この記事で分かること
・物価上昇が製造業へ与える影響とは
・なぜ物価上昇が起こっているのか
・インフレと円安の関係

目次

物価上昇が製造業へ与える影響とは

結論
・サプライチェーン上の様々費用が上がる
さまざまな国において部品などの生産や調達を行い、サプライチェーンを構築しているような場合には、地域により部品や人件費などの価格が上昇。企業の利益を圧迫します。
・製品の販売価格に転嫁される
製品の販売価格はその製造場所や、販売場所でインフレが起こると価格の差異により損失が発生するリスクがあります。

上記は現在の物価上昇が製造業へ与える影響です。
消費が増える→物価が上がる→会社業績が良くなる→給料が上がる、の繰り返しが良いインフレです。好景気が伴った良いインフレであればむしろ物価上昇は歓迎すべき状態です。

しかし、現在のように景気が停滞しているにもかかわらず物価が上昇することはただのコスト増加であり、コロナ禍から回復しつつあった製造業に悪影響を与えます。

次は現在の物価上昇の要因は何か解説していきます。

そもそもなぜ物価上昇が起こっているのか

まず物価上昇の原因は3つあります。

物価上昇の3つの理由
1.原油や天然ガス等資源価格の高騰
2.コロナ禍でモノの供給が不足している
3.急激な円安による輸入価格の高騰

一つずつ解説していきます。

原油や天然ガス等資源価格の高騰

新型コロナワクチンの普及に伴い経済活動が再開、世界的にエネルギー需要が高まり、価格が上がりました。
さらにウクライナ危機で、ロシアからの供給が途絶える不安をネタに投機筋が価格を押し上げている面もありますが、
以前から世界各国が「脱炭素」推進を掲げていたため化石燃料の開発増産が停滞していたことも影響しています。

コロナ禍でモノの供給が不足している

コロナ禍による生活スタイルの変化

コロナ禍になったことで、世の中の働き方、生活スタイルが大きく変わりました。

アメリカでもリモートワークの広がりによって、郊外移転が増え、新築住宅着工件数がコロナ前より2倍ほど増加しました。これに伴い、住宅建設に使う、木材需要も急増しています。

その他にも室内で満喫できる巣ごもり需要として、人気に火がついたのがゲーム(任天堂の「ニンテンドースイッチ」は、2020年度に前年度比37%増、過去最高販売を記録)

感染リスクの少ない「移動する個室空間」として車の需要が上昇(旅行などは車で移動する人が増えている)など、コロナ化で新築を立てる、ゲーム機を購入する、車を購入する需要が増え、半導体や木材が不足してきました。

コロナ禍の海運問題

コロナ禍でモノ需要が拡大する一方、外出制限などで現場作業が滞り、コンテナ輸送をさばくペースが低下してしまいました。

こうして2020年夏ごろから、海運に使うコンテナ船が不足。それによってコンテナ運賃も2倍以上に高騰しています。

さらには、コンテナの積み下ろし待ちの船が急増したことにより、米ロサンゼルスの港湾を中心に「港の大混雑パニック」へと波及しました。

穀物の不足

食品メーカー各社が2022年1月以降にパンや食用油などを5〜10%ほど一斉値上げされ、2021年4月や7月にも相次いで値上げしているだけに、食品の「値上げラッシュ」は深刻化されています。

その背景には、パンや豆腐、食用油の原材料である小麦や大豆、とうもろこしなどの穀物の世界的な高騰です。

最大の要因は、右肩上がりの需要に対して生産する農地面積が増加していないこと。

また、世界的な肉食需要の拡大も、穀物不足が要因になっています。もちろん、穀物価格が上がれば、食肉価格も上がり、日本でも牛丼の値上げなどが相次ぎ、「ミートショック」として肉の価格上昇が懸念されています。

さらに、ブラジルなど新興国では、焼き払い型農業による農地の劣化のほか、火災による農地焼失も懸念されています。

急激な円安による輸入価格の高騰

資源価格高騰や円安による輸入物価の上昇は、価格が高騰した輸入品が最終財である場合には直接的な国内価格上昇となります。

また、高騰した輸入品が原材料や中間財の場合には、企業が生産コスト増を国内価格に転嫁するかどうかに依存します。

原油とガソリン、電気代・ガス代のように、価格が高騰した輸入品と国内価格に直接的な関係がある財の場合には同様に国内価格上昇につながります。

物価上昇は主に資源高騰、モノ不足、円安進行の3つの要因が合わさり、長期化が予想されます。
つまり今後インフレが当たり前になるということです。

インフレと円安の関係

インフレとは継続的な物価上昇によってお金の価値が相対的に減少し、国民の購買力が低下することを指します。

インフレが進むと、為替は円安に動きやすくなります。その理由は何でしょうか。インフレになってモノの値段が上がると、相対的にお金の価値が下がります。

例えば、これまで1,000円で買えたものが、1,200円に値上がりしたとします。

同じものを買うためにたくさんのお金を払うので、円の価値は下がっているといえます。円の価値が下がると、円と外貨を交換するときの比率である為替レートにおいても円の価値が下がるため、円安の原因になります。

逆に、円安がインフレを招くこともあります。

円安になると、海外では日本の製品が安くなり買いやすくなります。日本では海外に輸出をする自動車メーカーなどが経済的に大きな割合を占めているので、輸出が増えて企業の業績があがると景気が良くなります。

景気がよくなると、お給料も上がり、モノがよく売れてインフレが起きやすくなります。

インフレには、良いインフレと悪いインフレがあるといわれています。

良いインフレは、先ほど紹介した景気が良くて物価が上がるインフレです。景気が良いと、モノがよく売れますから、需要が供給を上回り、モノの値段が上がりインフレになるのです。

景気が良いときは、給与も上がりやすいため、モノの値段が上がっても、それほど気にならないかもしれません。一方、悪いインフレは、例えば原材料の値上がりなどで、モノを作るための費用が高くなり、その結果、モノの値段が上がるインフレです。

日本は食品をはじめたくさんのモノを輸入しています。円安により輸入材料の値段が上がれば、その分、企業のコストは増え、利益は減ります。給与は増えていないのに、企業が利益を上げるために商品の値段を上げると、生活は圧迫されてしまいます。

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悪いインフレ(スタグフレーション)とは何か

スタグフレーションという言葉は経済の停滞を意味する「スタグネーション」と
物価が継続的に上昇する「インフレーション(いわゆるインフレ)」を組み合わせた造語です。

国内の景気がよく、企業も増収増益、私たちの賃金も上昇している中で、国内における需要が旺盛で供給が追い付かないと、物価は上昇していきます。

このようなインフレを「ディマンドプルインフレ」といい、一般的には“良いインフレ”と呼ぶ。
一方で、旺盛な需要が物価を押し上げるのではなく、海外から輸入している食料やエネルギーの価格が上昇し、そのコスト増を企業が価格転嫁することで起こるインフレを「コストプッシュインフレ」といいます。

それでは今の日本の物価状況は何と呼ぶべきなのだろうか。
2020年、内閣府は2012年12月から始まった景気拡大が2018年10月に終わり、翌月から後退局面に入ったと認定しました。

しかし景気後退の開始から1年も経たずに消費増税をし、その後2年以上にわたるコロナ禍、そしてロシアのウクライナ侵攻と悪材料が相次いでいます。

つまり日本の景気はとても良いとは言えません。そのような中で、食料やエネルギー価格が上昇することで物価だけが上がっていますので、この状況はスタグフレーションと言えます。

まとめ

コロナ禍で消費スタイルがサービス消費からモノ消費への揺り戻しが起き、
製造業界とりわけ自動車業界はコロナからの本格的な景気回復が期待されました。

しかし、ここにきて前述した複合的な要因による物価上昇が昨今の円安とも連動し、
業界の本格的な景気回復について雲行きが怪しくなってきています。

これが一過性のものか常態化するかは現時点では判断が難しいですが、
物価上昇の背景を知り、その影響を理解することが現在の製造業界を理解するヒントになると考えています。
本記事が参考になれば幸いです。

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この記事を書いた人

IT業界で製造領域に携り7年

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