【CASEとは?分かりやすく解説 】未来の自動車産業はどう変化するのか

2016年9月世界4大モーターショーであるパリモーターショーで、ダイムラーが新型EVを発表しました。ディーター・ツェッチェCEOは「CASE」戦略について語りました。
「CASE」とは
「C=Connected(コネクティッド)」
「A=Autonomous(自動化)」
「S=Shared &Service(シェアリング&サービス)」
「E=Electric(電動化)」
上記自動車産業の4つのトレンドの頭文字を取ったダイムラーによる造語です。
今回は「CASE」についてわかりやすく解説します。

目次

CASEとは

CASEとは何か

「CASE」とはダイムラーによる造語のことですが、一体何なのか解説します。
「C=Connected(コネクティッド)」
「A=Autonomous(自動化)」
「S=Shared &Service(シェアリング&サービス)」
「E=Electric(電動化)」

CASEは車がネットワークに常時接続され、自動運転技術の普及でドライバーは運転から解放される。車の価値は所有だけでなく、共有することで新たな価値を生み、その原動力として排ガスのない電気が使われる。

ダイムラーは4つのトレンドを個別ではなく、複合的に連携することで車の価値が劇的に変化すると主張しました。

CASEの必要性

CASEは一企業の成長戦略ではありません。社会問題を解決するからこそ、この言葉が広く認知されたと考えています。

環境問題
・地球規模の環境規制、排ガス規制、化石燃料から脱却

社会問題
・交通事故・渋滞・騒音(65歳以上が事故の過半数を占める)

人口問題
・少子化、高齢化による車離れ、過疎化・過密化の二極化

顧客ニーズ
・所有に対する価値観の変化。QOL向上への行動様式の変化

過去100年間に車は大普及しました。同時に交通渋滞や騒音、交通事故の死亡者数は年間125万人に達します。また、大気汚染や地球温暖化、エネルギーの枯渇など、環境へ多大な負荷を生じさせてきました。温室効果ガスの20%近くは車の製造と使用により排出されています。
CASEがもたらすのは、例えば必要な時に呼び出せる無人タクシーが人・モノの移動を支え、渋滞や交通事故を削減し、その原動力は地球環境に優しく、最適化されたエネルギーが支えているといった世界です。

以上がCASEの概要になります。
CASEは4つのトレンドが複合、連携することで新たな価値を創造する為の自動車業界の戦略のことです。
次は、より理解を深めるために、それらのトレンドを分けて解説します。

コネクティッド Connected


トレンドであるコネクティッド。そもそも何なのか、どのように私たちの生活に価値をもたらすのか。

コネクティッドとは何か

コネクティッドとは、車がIoT端末としてネットワークにつながることです。
例えば、OTAを用いた車のファームウェアの更新、自動運転車の遠隔操作、ビッグデータとのつながりによる新しいサービスを受けられるなどの恩恵があります。

IT企業が提供する専用の車載端末やスマートフォン連携型を含めれば日・米・欧・中の主要4地域で、近い将来にほぼ全てぼ車がネットワーク接続性を持ったコネクティッドカーになる可能性があります。

更に車の設計、調達、生産、流通、サービスの裾野の広いバリューチェーンもネットワークに接続されます。交通も含めれば、公共交通システムから社会インフラまで連結したっ巨大なネットワークが構築され、車の価値は全く新しいものになります。

 

OTA(Over The Air)技術とは、データその送受信を無線通信で行うための技術です。OTAを活用することで、IoT機器やスマートフォンなどに対する、ソフトウェアやファームウェアのアップデートのプログラムを無線経由で送受信可能です。またこのようなソフトウェアアップデートのためのOTAを「SOTA(Software Updates Over The Air)」と呼び、ファームウェアのアップデートのためのOTAを「FOTA(Firmware update Over The Air)」と呼ぶこともあります。

コネクティッドによる車の新しい価値

コネクティッドを基に成長が見込まれるサービスは自動運転とシェアリングエコノミーです。ドライバーは運転から自由になり、時間を有効活用できます。
ライドシェアを活用すれば、自由に好きなところへ安価で移動できるメリットがあります。車の概念が変わり、所有だけではなく共有の世界が広がります。

ライドシェアやカーシェアは自動運転技術と融合したときにロボットタクシーやロボットシャトルバスといった無人移動モビリティーサービスとなります。

更に車から得られる移動や渋滞の走行データは分析、活用すれば、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)を生み出すことが可能になります。誰もが自由に移動できる都市y社会が再設計され、社会インフラとして車の価値や交通システムにも大きな変化が訪れます。車はデバイスになり、AIを基にしたスマートシティが築かれ、前述した社会課題の解決を可能にします。その基盤がコネクティッドであり、車の新しい価値です。

自動運転 Autonomous


自動運転が近い将来に実現するのは確実です。自動運転が私たちにもたらす恩恵は想像しやすいのではないでしょうか。自動運転を深掘り解説していきます。

自動運転と先進運転支援システムの違い

自動運転レベルは米国標準化団体のSAEレベルが世界の標準です。

自動運転レベルの分類
・レベル1(フットフリー)
システムが前後・左右のいずれかの車両制御に係る運転操作の一部を実施。
運転支援に該当し、前後方向の加速、ブレーキや左右方向のステアリングのいずれかの操作が自動で行われます。(SUBARU アイサイトなど)
・レベル2(ハンズフリー)
システムが前後・左右の両方の車両制御に係る運転操作の一部を実施
部分的自動運転と呼ばれ、前後・左右の両方の操作が自動で行われます。(日産自動車 プロパイロットなど)
・レベル3(アイズフリー)
システムが限定条件下で全ての運転を実施。システムの要請に応答が必要。
条件付き自動運転に該当し、車両の前後左右とも自動運転され、かつシステムが監視を行います。ただ、システムが対応できない状況下ではドライバーに運転の主導権が戻されます。操作が戻されることを「フォールバック」といい、走行中にドライバーに運転の主導権が戻されます。したがって自己責任がドライバーかシステムかは曖昧なことが課題です。
・レベル4(ブレインフリー)
システムが限定条件下で全ての運転を実施。システムからの要請に応答が不要。
高度自動運転に該当し、運転操作、周辺監視を全て車のシステムが行い、事故責任がシステムに帰属します。しかし、大雪など、システムが対応できなくなった場合、リスクが最小となるように車両を停止させる。レベル3と違い、車両を停止させてから、人間のドライバーや遠隔操作に引き継ぐことがようてんです。
・レベル5(ドライバーレス)
システムが限定条件なしに運転を実施。
このレベルが完全自動運転です。運転制限の無い自動運転のこと。

現状、明確な定義はありませんが、レベル1~2を先進自動運転支援システム、レベル3~5を自動運転と分類する場合が多いです。

自動運転の仕組み

自動運転の仕組みは運転に必要な「認知」をセンサーが行い、「判断」を半導体とソフトウェアが行い、「操作」を自動の機械が行います。

自動運転システムに必要な技術

【認知】
LiDAR
レーダー
カメラ
通信デバイス

【判断】
アルゴリズム
人工知能
半導体

【操作】
ステアリング
アクセル・ブレーキ
サスペンション

これらの技術が自動運転において環境やシーンを認識し、行動判断や軌道修正を行い、曲がる、走る、停止するなどの車体制御を可能にします。
自動運転の仕組みは先進技術の集大成であり、それ自体が大規模なシステムであると言えます。

自動運転の普及

自動運転の普及には技術だけでなく、賠償責任などの法整備、セキュリティなど社会的、倫理的な問題を解決する必要があります。
自動運転が起こす事故をどこまで許容するのか、自動運転の安全性についてどのような基準を設けるのか、サイバーテロによる車の乗っ取りなどのリスクに備えなければなりません。
世界に先駆けて欧州では、ドイツの経済エネルギー省により、「ペガサスプロジェクト」が設立されました。
BMW、ダイムラー、アウディなどの企業と産官学の17団体によるプロジェクトが自動運転の安全性評価の定義に取り組んでいます。

ドイツのペガサスプロジェクトとは
2016年にドイツ経済エネルギー省により設立された、産官学17団体によるプロジェクト
【目的】
・安全性の評価基準を定義する。
(自動運転システムの実験における標準化された手順を定義。)
・開発プロセス初期段階におけるテスト条件の統一。
・自動運転機能を保護する為のシステム開発。
・安全認証プロセスを実現し、自動運転分野で主導権を握る。
【概要】
・期間:2016年1月~2019年6月
・予算:3450万ユーロ
・パートナー:BMW、ダイムラー、アウディ、ティア1サプライヤー、研究機関、中小企業、化学期間等(17団体)

米国では、2017年10月に連邦法「車両進化における生命の安全確保と将来的な導入及び調査に関する法律」(SELF DRIVE Act)が下院で可決されています。
自動運転の米国統一ルールとして連邦法の要件の制定を検討し、安全基準についての規則を発行するとしています。

中国では、北京や上海で認めていた公道走行実験を2018年からどの都市でも可能にし、対象を海外メーカーにも広げています。

自動運転の普及には技術意外にも多数の解決すべき問題があり、各国が普及に向けた問題の解決に取り組んでいます。

シェアリング&サービス Shared&Service


シェアリングエコノミーとは、個人や企業が持つモノや場所、スキルなどの有形・無形資産を、インターネット上のプラットフォームを介して取引する新しい経済の形のことです。さまざまなモノを共有することで成り立つビジネスであることから、「共有経済」とも呼ばれます。

経済的なメリットだけでなく、人や文化の交流、環境負荷も減らすことができます。スマートフォン経由のネットワーク接続で急速に拡大しており、2025年には約36兆8500億円へ拡大するという試算もあります。

自動車産業においてのシェアリングエコノミーでは、日本のノッテコ、欧州のブラブラカー、米国のカープールなどがあり、カーシェア、ライドシェアの二つのシェアリングエコノミーが普及しています。

特にライドシェアは自動運転技術と融合して「ロボタクシー」と呼ぶ無人の移動サービスへ進化しようとしています。

カーシェアとライドシェアの違い

カーシェアとは企業が保有する車両をメンバーへ貸し出す仕組みです。にほんではタイムズカーシェア、欧州ではダイムラーのカーツーゴーがあります。
ライドシェアとは運転手のいる車に希望者を同乗させるサービスであり、「移動のシェア」となる。
前述にもあるようにライドシェアは近い将来ロボタクシーへ進化してMaaS市場を生み出すことが考えられます。

MaaS

シェアリング&サービスが進化した世界観がMaaSと呼ばれる概念。
MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスです。

将来のスマートシティなどの都市計画も視野に入れた次世代の移動システムを構築することであり、それは2050年までに世界人口25億人増加による、都市の過密化の解決にも期待されています。

シェアリング&サービスを含め、CASEのトレンドはMaaSつながります。自動社業界の戦略が未来都市につながっていく。MaaSを知ることで、よりCASEへの理解が深まります。

電動化 Electric


日本のメーカーからも続々と発表されているEV自動車。持続可能な産業の発展のために、CACEを支える原動力とされているのが電動化技術です。電動化について、環境問題の解決の視点で解説します。

環境問題と電動化

世界の環境問は、①排ガス問題、②温室効果ガス(GHG)排出問題、③次世代エネルギー問題という3つがあります。

①は有害物質を含む排ガスを一定水準以下へ浄化することを義務付ける規制があり、
②温室効果ガス排出制限とは、COP21(パリ協定)で取り決めた産業革命いぜんに比べて気温上昇を2℃未満に保ち、排出量をピークアウトさせる約束があります。
③次世代エネルギーの普及は一定比率を強制的にゼロ・エミッション
車(プラグインハイブリッドや燃料電池車)に置き換えるものと、②で取り決めたCAFE(企業平均燃費)で規制する2つの方法で進んでいます。

CAFEとは
自動車の燃費規制で、車種別ではなくメーカー全体で出荷台数を加味した平均燃費(過重調和平均燃費)を算出し、規制をかける方式。ある特定の車種では燃費基準を達成できなくても、そのほかの車種の燃費を向上させることでカバーすることが可能になる。各メーカーがそれぞれの技術の特質に応じた選択と集中を柔軟に行うことで全体として高い省エネ効果を期待できるとしている。
アメリカでやEUで採用されており、日本でも2020年度燃費基準に採用されました。

EV普及の要因

①環境問題、②産業政策、③エネルギー政策が世界のEV化を進める大きな要因になっています。
オランダでは2025年、ドイツ、インドでは2030年、イギリス、フランス、インドネシアでは2040年までにエンジンを用いる新車販売を禁止する政策を検討しています。
しかし、ドイツはディーゼル車を、ノルウェーではハイブリッド車を許容するほうしんであり、EVが欧州全域に広がるの可能性は低いと言えます。
一方でインドのモディ政権が2030年までにEV100%へ移行する政策を出しています。これは同国で市場シェア50%を占めるスズキにとって、大きな影響がありました。そこでスズキとトヨタはインド市場向けEV投入の協力関係を締結しました。
モディ政権は石油依存からの脱却を政策に掲げていると同時に中国のNEV戦略に対抗する意図があったと考えられます。

中国のNEV戦略
中国政府は国内製造業の自立を目指す産業政策「中国製造2025」(2015年5月)で、自動車産業を柱とする製造業全体の構造転換を表明、その牽引役として新エネルギー自動車(NEV)分野での自主ブランド製品のシェアを、2025年には80%に引き上げる方針を示したうえで、2020年のNEVの普及台数目標を500万台としている。
背景にあるのはNEVを国家の成長戦略とした2012年の「省エネルギーおよび新エネルギー自動車産業発展計画(2012-2020)」だ。その具体的な政策目標として「十三五国家戦略性新興産業発展計画」(2016年12月)のなかで、「2020年までにNEVを500万台普及させる」という目標が打ち出された。この政策により中国は2018年段階でEV・PHV合わせて127万台を販売する世界最大のNEV市場を現出させた。

まとめ

CASEとは初めはダイムラーが提唱した戦略のことでした。それが現在は自動車業界のキーワードとなり、次世代の自動車産業、MaaS推進の為に必須の技術として認知されるに至ります。
CASEを知ることはこれからの自動車産業の潮流を知るだけでなく、各国の経済・環境政策を知ることにつながります。
製造業界で活躍している、または興味があるあなたのお役に立てれば幸いです。

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この記事を書いた人

IT業界で製造領域に携り7年

業界知識や課題、採用、転職、お金にまつわることなど、
製造業界で働くあなたや、製造業界に関わるあなたへ
知っておきたい情報をわかりやすくお伝えします
「働くあなたを元気にしたい」をモットーに投稿していきます

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