世界の半導体メーカーと業界構造を、わかりやすく解説

昨今、半導体が注目される背景には
テクノロジーの発達による世界のデータ量の急増があります。


出典:IDC’s Global DataSphere Forecast

ロジック半導体、メモリ半導体の市場規模も拡大しています。


出典:WSTS 2021年春季半導体市場予測

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半導体デバイス市場は活況で、今後も成長が見込まれます。
ではどのようなメーカーが製造しているのか。
わかりやすく解説していきます。

目次

サプライチェーン

まずは、半導体がどのように供給されるのか、簡単に解説します。
各工程の主要企業を知ることで、半導体業界の構造が見えてきます。

①設計

製造の元となる回路を開発しデータで納品

②製造

STEP.1 シリコンウエハーを製造
高純度のシリコンの塊を製造→輪切りにしてプレートを作成(これが半導体デバイスの基盤になる)

STEP.2 フォトレジストを塗る
酸化膜などを形成した後、感光材であるフォトレジストを塗る。

STEP.3 露光と現像
フォトマスクを通じてフォトレジストに特殊な光を当て、
マスクのパターンを焼き付ける。

STEP.4 エッチング
フォトレジストが溶けて露光した部分を、化学品によってさらに溶かすことで、
できた溝が回路となる。

STEP.5 検査
シリコンウエハーに製造した半導体デバイスを検査する。

③装置・材料

各工程における装置や材料を提供

 

半導体デバイスは①〜③を担う企業で成り立っている。
①回路の設計を手がける企業
②その回路を使って製造する企業
③製造工程で使う装置や材料を提供する企業

ロジック半導体では設計と製造の分担が主流。
メモリ半導体は回路設計が複雑でない為、設計と製造を同一企業が担う。

・ファブレス
自社で製造せず、設計のみを行う

・ファウンドリ
自社で設計せず顧客からの設計データに基づいて製品を作る。

・IDM
垂直統合で設計と製造を行う企業。

設計・製造メーカー

ロジック半導体の設計・製造メーカー

 

・垂直統合型企業
インテル、サムスン
・設計企業
エヌヴィディア、クアルコム、ARM、AMD、ハイシリコン
・製造企業
TSMC、UMC、SMIC、GLOBALFOUNDRIES

 

インテル
ロジック半導体(垂直統合型)
アメリカ 設立:1968年
「インテル入ってる」で世の中に広く知られ、
コンピューターの頭脳に当たるCPUで圧倒的な世界シェアを誇る。
しかし、スマホ用CPUとAI半導体(GPUなど)では他社に少し、
遅れをとっている。
尚、PCサーバー用CPUでも老舗のAMDに追い上げられている。

エヌビディア
ロジック半導体(設計)
アメリカ 設立:199
PCゲーム愛好家向けにグラフィック処理に優れたGPUを提供してきた。
GPUは同様の計算を大量に平行処理することを得意としている。
それが近年、AI処理にも適していることが明らかになり、
今や自動運転向けを含めたAI半導体メーカーの中核企業になった。

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クアルコム
ロジック半導体(設計)
アメリカ 設立:1985年
スマホ用CPUシェア過半数を占める。
創業間も無く携帯電話事業は京セラに、通信事業はえりくそんに売却。
通信にまつわる半導体を軸として、ファブレスとして知財収入を
中心とするビジネスを確立した。

ハイシリコン
ロジック半導体(設計)
中国 設立:2004年
ファーウェイ傘下のファブレスメーカー。
米中貿易摩擦が激化する中で、ファーウェイのスマホ向けに、
世界トップクラスの性能を持つCPUを供給してきた。
しかし、ファブレスの為、製造面で台湾のTSMCの技術に、
全面依存している点が弱点である。

ARM
ロジック半導体(設計)
イギリス 設立:1990年
半導体そのものではなく、「ARMアーキテクチャ」と呼ばれ、
CPUが動作する際の命令セットなど基本設計を開発。
それを幅広いファブレスにライセンス提供することで、知財収入を得るビジネスモデル。
低消費電力などに優れスマホのCPUには欠かせない。
2016年にソフトバンクブルークになり、2020年9月にエヌビディアが買収。

TSMC
ロジック半導体(製造)
台湾 設立:1987年
自社製品は一切持たず、ロジック半導体の製造受託に徹する世界最大のファウンドリ。
アップルのスマホ・PCのCPU、ソニーや任天堂のゲーム機向けの製造も、
一手に引き受けている。
製造技術で世界トップ企業。米中半導体摩擦の情勢に大きく影響を与える。

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SMIC
ロジック半導体(製造)
中国 設立:2000年
中国のファウンドリ。 TSMCに対して技術的には少なくとも5ねん遅れていると指摘されているものの、グローバルプレイヤーになるまでに成長。
創業者のリチャード・チャンは、TSMC創業者モリス・ちゃんの元部下。
知財濫用でTSMCから訴えられるなど、因縁がある。

 

TSMC
これらの企業の中で、最も注目したい企業。
それが、世界の半導体製造の50%を担う台湾企業TSMC
どれだけレベルの高い設計企業でもTSMCの技術が無ければ、
世界最先端のロジック半導体をつくることはできない

競争領域は半導体デバイスの集積度に直結する「微細化」
最先端技術では、2ナノメートルという次元に達している。
*1ナノメートルは人間の髪の毛の太さの10万分の1

 

ロジック半導体メーカーの微細化技術比較

TSMC 3nm
サムスン 5nm
インテル 10nm
グローバルファウンドリーズ 12nm
SMIC 12nm
UMC 14nm

出典:各社発表

メモリ半導体の設計・製造メーカー

・DRAMの製造
サムスン、マイクロン、SKハイニックス、紫光集団
・フラッシュメモリの製造
サムスン、キオクシア、ウェルタンデジタル、SKハイニックス
・DRAM
CPUやGPUなどが演算する際に必要な情報を一時的に記憶するメモリ。
電源を落とすとデータは消える。
・フラッシュメモリ
PCやスマホで写真や音楽を保存する際は、
ここにデータが記憶される。
電源を切ってもデータは消えない。

サムスン
韓国 設立:1969年
DRAMとフラッシュメモリの両方で世界トップシェア。
また、ロジック半導体も手がけ、先端製造技術でTSMCに迫る企業。
ロジック半導体では、自社設計のCPUの製造に加え、
エヌデヴィアや、テスラなどから製造を請け負っている。

SKハイニックス
韓国 設立:1983年
サムスンに次ぐ、韓国の半導体メーカー。
DRAMもフラッシュメモリでもサムスンに遅れをとっており、
逆転すべく、キオクシアへの出資とインテルのフラッシュメモリ事業買収等、積極的な仕掛けを行っている。

マイクロン
アメリカ 設立:1978年
世界シェア3位のアメリカのDRAMメーカー。フラッシュメモリなども手がける。
経営難に陥っていたエルピーダメモリ(NEC、日立、三菱電機の連合企業)を2013ねんに傘下に。
エルピーダはマイクロンメモリジャパンとして再生。広島県の工場が健在。

キオクシア
日本 設立:2017年
経営難の東芝が、フラッシュメモリ事業を切り離して設立。
世界シェア20%弱。35%のサムスンとの開きがあるが、グローバルで戦える数少ない日本企業。
NAND型フラッシュメモリは、1990年代初頭に東芝が世界に先駆けて製品化したもの。

紫光集団
中国 設立:1993年
清華大学系ハイテク企業。傘下にフラッシュメモリを手がける、
長江存儲科技と2009ねんに破綻したドイツ・キマンダの中国工場を継承した、Unigroup Guoxin、スマホ用ファブレス企業のスプレッドトラムを傘下に収める。
2020年11月に債務超過が表面化し、政府の全面支援を受ける。

半導体製造装置・材料メーカー

半導体製造装置・材料は日本の伝家の宝刀。

・STEP.1 シリコンウエハー製造
SUMCO、信越化学工業、トクヤマ
・STEP.2 フォトレジストを塗る
東京応化工業、JSR、信越科学工業、東京エレクトロン
・STEP.3 露光と現像
ASML、HOYA、ニコン、キャノン、大日本印刷
・STEP.4 エッチング
ステラケミファ、森田化学工業、アプライドマテリアルズ
・STEP.5 検査
アドバンテスト、東京精密

ASML(装置)
フランス 設立:1984年
露光装置のトップメーカー。露光は半導体デバイスの微細化を進める上で、
最も重要な工程。かつては、ニコンやキャノンに対する後発組だったが、
今や先端分野で世界シェアをほぼ独占している。
特にEUV露光機という先端品はASMLだけが装置を製造している。
2019年末にはSMICに供給予定だったEUV露光機が、アメリカの圧力で止められた。

アプライドマテリアルズ(装置)
半導体製造装置の世界トップ企業。半導体製造時に化学品や金属の幕を、
薄く均一に塗る装置や、エッチングという加工装置を手がける。
TSMCやサムスンなど半導体メーカーの工場には、同社製造装置が必ず使われている。

東京エレクトロン(装置)
日本 設立:1963年
半導体製造装置で、世界4強の一角となる売上高1兆円企業。時価総額は8兆円を超える。
コーター・デベロッパーと呼ばれる装置で世界シェアをほぼ独占。
ロジック半導体やメモリ各種のメーカーとバランスよく取引しており、
同社の業績動向は半導体業界全体の市況を示すとも言われる。

信越化学工業(材料)
日本 設立:1926年
シリコンウエハーで世界トップシェア。フォトレジストでも、
JSRや東京応化工業と並び世界トップ。
産業インフラ基盤として使われる半導体において、その製造基盤として使用されるシリコンウエハーの販売状況を見ればあらゆる製造業の市況が分かる。

東京応化工業(材料)
日本 設立:1940年
売上高1100億円。フォトレジストシェアで世界トップクラスのシェア。
時価総額は3000億円。

まとめ

半導体とは何か?に続いて半導体メーカーと業界構造を解説しましたが、
半導体企業の動向は製造業界の景況感の先行指標になることが分かりました。

設計、製造企業はアメリカ、中国勢がグローバルシェアを占めていますが、
製造装置、素材分野では日本企業の活躍が目立ちます。
ソフトウェアなどと違い、簡単に模倣できないアナログな技術を大切にしていくことが、日本の製造業の発展につながるのだと思います。

本記事が半導体業界を理解することの一助となれば幸いです。

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この記事を書いた人

IT業界で製造領域に携り7年

業界知識や課題、採用、転職、お金にまつわることなど、
製造業界で働くあなたや、製造業界に関わるあなたへ
知っておきたい情報をわかりやすくお伝えします
「働くあなたを元気にしたい」をモットーに投稿していきます

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