【トヨタ自動車 徹底解剖 Vol.2】トヨタ生産方式編

トヨタ自動車の強み源泉。今や世界の模範となるトヨタ生産方式。
それがどのようなものか。なぜフォードの大量生産方式より優れた成果を生んだのか。
分かりやすく解説していきます。

目次

トヨタ生産方式とは

1.トヨタ式の作り方(生産現場に流れを作る)
旋盤、フライス盤、ボール盤等の機械を固めて1箇所に置くのではなく、一台一台並べておく。それにそって従来の一人一台持ちから「多工程持ち」へ移行し生産性を向上させること。

2.ジャストインタイムの生産
トヨタ式のつくり方にのっとり、ジャスト・イン・タイムで生産すること。

3.ジャスト・イン・タイムを実現する様々な工夫
トヨタ式の作り方にのっとってジャストインタイムで生産するには、沢山の課題があり、それを解決する工夫の積み上げが現在のトヨタ生産方式を支えています。

トヨタ生産方式の2本柱

1.ジャストインタイム

「後工程が前工程に、必要なものを、必要なとき、必要なだけ引き取りに行く」そうすれば、「前工程は引き取られた分だけつくればよい」
「何を、どれだけ」欲しいのかをはっきりと表示する方法。
それを「かんばん」と称して、各工程間を回すことによって、生産量すなわち必要量をコントロールする。

2.自働化(自動化ではない)

「ニンベンのある自働機械」の意味は、トヨタでは「自動停止装置付の機械」をいう。トヨタのどこの工場においても、ほとんどの機械設備には、それが新しい機械であれ古い機械であれ、自動停止装置が付いている。たとえば、「定位置停止方式」とか、「フルワーク・システム」とか、「バカヨケ」その他、もろもろの安全装置が付加されている。機械に人間の知恵が付けられている。

異常が出れば機械が自動ストップする。また、人手作業の生産ラインで異常が出れば、作業者自身がストップボタンを押してラインを止める。
問題を特定し、改善を繰り返すかとができる。

 

トヨタ生産方式を野球で例えると、、
野球に例えるとジャストインタイムはチームプレーであり、自働化とは個人技を高めることである。
「ジャスト・イン・タイム」によって、生産現場の各工程に当たる、グラウンドの各野手は、必要なボールをタイミングよくキャッチし、連携プレーでランナーを刺す。全工程がシステマチックに見事なチーム・プレーを展開することができる。
生産現場の管理・監督者は、さしずめ野球でいえば監督であり、打撃・守備・走塁コーチである。強力な野球チームは、常にシステム・プレーというか、どんな事態にも対応できる連携プレーをマスターしているものだ。「ジャスト・イン・タイム」を身につけた生産現場とは、連携プレーのうまい野球チームにほかならない。
いっぽうの「自働化」は生産現場における重大なムダであるつくり過ぎを排除し、不良品の生産を防止する役割を果たす。そのためには、平生から各選手の能力に当たる「標準作業」を認識しておき、これに当てはまらない異常事態、つまり選手の能力が発揮されないときには、特訓によってその選手本来の姿に戻してやる。これはコーチの重大な責務である。
かくて「自働化」によって「目で見る管理」が行き届き、生産現場すなわちチームの各選手の弱点が浮き彫りにされる。その結果、直ちに選手の強化策を講じることができる。

トヨタ生産方式の目的

目的は原価の低減

生産効率、管理効率、経営効率など、効率なる言葉がしばしば使われるが、なぜ現代の企業が「効率」を追求するかといえば、それは企業目的の根幹ともいうべき、「原価の低減」を実現するためである。
トヨタに限らず製造企業の利益は、原価を低減してこそ得られるものである。かかっただけの原価に利潤を上のせして値段を決定するような「原価主義」の考え方は、最終的なツケを消費者に回すことになる。それは防がなければならない。

トヨタ生産方式を実行する

トヨタ生産方式をどのように実現させ、広めたのか。
それは、あなたも一度はみみにしたことがある工夫を重ねることでした。

なぜ5回

一つのことになぜを5回繰り返す

1.「なぜ機械は止まったか」
→オーバーロードがかかってヒューズが切れたからだ

2.「なぜオーバーロードがかかったのか」
→軸受部の潤滑油が十分でないからだ

3.「なぜ十分に潤滑しないのか」
→潤滑ポンプが十分くみ上げていないからだ

4.「なぜ十分くみ上げないのか」
→ポンプの軸が摩耗してガタガタになっているからだ

5.「なぜ摩耗したか」
→ストレーナー(濾過器)がついていないので、切粉が入ったからだ

なぜ5回を繰り返すことによって、なぜ機械が止まったのか、
ストレーナーを取りつけるという対策を発見できる。

トヨタ生産方式が生まれた時の問

「なぜトヨタでは機械を一人一台しか持てなのか」
→機械が加工完了で止まるような仕組みになっていないから
ここから「自働化」の発想が生まれる。

「なぜジャスト・イン・タイムにものがつくれないのか」
→前工程が早くものを作り過ぎる。一個何分で作るかがわかっていない
その結果として後述する「平準化」の発想を導き出すことができる。
「なぜつくり過ぎのムダが出るのか」に対して、「つくり過ぎを押さえるはたらきがない」という第一の答を展開することによって、「かんばん」の発想が生まれた。

この5回の「なぜ」がトヨタ生産方式のきほんとなっている。

無駄の徹底分析

無駄を徹底的に排除する2つのポイント

1.能率の向上は、原価低減に結びついてはじめて意味がある。その為には。必要なものだけをいかに少ない人間でつくり出すのか、という方向に進まなければならない。

2.能率を一人一人の作業者、そしてそれが集まったライン、さらにはラインを中心とする工場全体という目でみると、それぞれの段階で能率向上がなされ、その上に全体としての成果が上がるような見方、考え方で能率アップが進められなければならない。

現状の能力=仕事+無駄(作業=働き+無駄)
無駄をゼロにして仕事の割合を100%に近づけていくことこそ、真の能率向上である。
トヨタ生産方式では必要数だけしかつくってはいけない。したがって人を減らして多過ぎる能力を必要数に見合ったものにする。

能率とは
生産活動の技術的有効性を示す指標で、通常は標準と実績を対比して百分比で示す相対能率をもって単に能率という。 具体的には、機械能率、製造能率、労働能率などで測定する。 機械能率は、エネルギーの投入に対する産出の割合でとらえ、「エネルギー効率80%」のように表す。

トヨタの無駄の摘出

1.つくり過ぎの無駄
2.手持ちの無駄
3.運搬の無駄
4.加工そのものの無駄
5.在庫の無駄
6.動作の無駄
7.不良をつくる無駄

これらの無駄を徹底的に排除することによって、作業能率の大幅な向上と余剰人員の可視化ができる。

目で見る管理

トヨタの各工場内はもちろんのこと、トヨタ生産方式に打ち込む協力企業の生産現場では、「目で見る管理」が徹底している。
柱には標準作業表が明確に示されている。顔を上げると、「アンドン」と呼ばれるライン・ストップ表示板が誰の目にもはいり、トラブルなどの発生状況は一目でわかるようになっている。

生産ラインのわきに運び込まれる部品箱には、これこそトヨタ生産方式を象徴する「かんばん」が付けられ、必要なものを、必要な時に必要なだけ手にすることができる。

かんばん

トヨタ生産方式の2本柱が、「ジャスト・イン・タイム」と「自動化」は前述していますが、それを運営する道具を「かんばん」と呼ぶ。

「かんばん」は長方形のビニールの袋に入った一枚の紙切れである。
これが「引き取り情報」または「運搬指示情報」及び「生産指示情報」として、トヨタおよび関連企業相互間の情報として、縦横に駆け巡っている。

トヨタ生産方式誕生の背景

当時のトヨタ自動車社長のトヨタ喜一郎氏が、「アメリカに追いつく」ことをめざし、「ジャスト・イン・タイム」のアイデアを実現しようとしたことが始まりである。

昭和10年11月、東京芝浦で行われたトヨタ自動車試作車東京発表会の席上、喜一郎氏は左吉翁未発表の言葉として、「私は織機で国のために尽くした。お前は自動車をつくって国のためにつくせ。これが父親の遺言となった。」と述べて話題を呼んだ。

その自動車事業が本格化する寸前、昭和27年3月26日に喜一郎市は亡くなったが、「ジャスト・イン・タイム」の思想は受け継がれ今日に実現している。

フォード方式との違い

フォード方式とは、流れ作業による大量生産方式のこと。
素材がベルトコンベアによる流れ作業のなかで機械加工され、組み立てられて完成品となり、完成された多種類のぶひんが、一定速度で動く最終組立ラインの各工程に供給され、組み付けられ、完成車がつぎつぎライン・オフしていく本格的な量産システムである。

トヨタ生産方式もフォード方式同様、流れ作業を基本にしている。

1.倉庫の有無
フォード方式は部品の置き場所の倉庫が必要だが、
トヨタ生産方式は倉庫が不要なこと。必要な部品が、必要な時に、必要な量だけ、最終組立工程の各ライン・サイドに到着する。

2.ロットへの考え方
フォード方式はロットを大きくして、計画的に量産することがコスト・ダウンに最大の効果を生むという考え。
トヨタ生産方式はロットはできるだけ小さく、プレスの型の段取り替えを速やかに行うという考え。

つまり「在庫を持つか持たないか」が決定的な違い。
ロットを大きくして、各所に在庫を必要とするフォード方式に対して、トヨタ生産方式は在庫から生まれるつくり過ぎの無駄、それを管理する人・土地・建物などの負担をゼロにすることである。

・まとめ

トヨタ生産方式は日本が高度成長時代、フォード方式が自動車業界のスタンダードだった最中、フォード方式を真似していては低成長時代になった場合、やっていけない。そんな危機感がシステム開発を後押ししました。
昭和48年のオイルショック以降、トヨタ生産方式は注目され、今日に至ります。
そこには常識にとらわれず、あるべき状態に向けて一つ一つ工夫を重ねたトヨタの人たちの粘り強さが伝わってきます。
トヨタ生産方式を知ることで、私たちの仕事にも多くの示唆を得られると思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

IT業界で製造領域に携り7年

業界知識や課題、採用、転職、お金にまつわることなど、
製造業界で働くあなたや、製造業界に関わるあなたへ
知っておきたい情報をわかりやすくお伝えします
「働くあなたを元気にしたい」をモットーに投稿していきます

コメント

コメントする

目次