【トヨタ自動車 徹底解剖 Vol.1】「ケイレツ」下請構造編 協豊会・栄豊会の違いとは?

自動車産業は現在「CASE」と呼ばれる変革期にあります。
ホンダをはじめとする完成車メーカーはEVを主軸に、「脱エンジン」シフトが目立ち、従来の自動車部品メーカーにとって大幅な需要減が予想されます。

一方で、トヨタ自動車はEVに加え、水素を燃料とした水素エンジン車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車など、様々なパワーユニットの開発をしており、
同社の動きはこれまでに自動車産業と関わりが乏しかったソフトウェアや素材メーカーも参入。
トヨタ自動車を頂点とした「ケイレツ」にも変化が起きています。

今回はトヨタ自動車の下請け企業構造をサプライチェーン含めて解説していきます。

この記事で分かること
・トヨタ自動車の下請け構造・下請け企業
・二豊会の歴史
・協豊会・栄豊会の違い

目次

■トヨタ自動車下請け構造を知る

トヨタ自動車の下請け構造は同社を頂点とし、トヨタ自動車グループ、1次下請け、2次下請けがあります。グループ会社、下請け会社の概要を見ていきます。

・トヨタ自動車グループ(主要関連会社・子会社)15社

株式会社豊田自動織機
・設立 1926年 11月18日
・事業内容 繊維機械、自動車、産業車両等の製造・販売、物流事業
・資本金806億6,200万円
豊田自動織機は、豊田佐吉が発明したG型自動織機の製造・販売を目的に、1926年に創立。
その後、事業の多角化を進め、繊維機械、自動車(車両、エンジン、カーエアコン用コンプレッサーほか)、産業車両、エレクトロニクスと事業領域を拡大。

愛知製鋼株式会社
・設立 1940年 3月8日
・事業内容
・資本金250億1,600万円
トヨタグループ唯一の素材・特殊鋼メーカー。
自動車分野を中心に幅広い産業界に供給している。

株式会社ジェイテクト
・設立 2006年 1月1日
・事業内容 ステアリングシステム、軸受、駆動部品、工作機械、電子制御機器の製造・販売
・資本金455億9,100万円
世界シェアNo.1のパワーステアリングをはじめとする自動車部品のほか、ベアリング、工作機械等を製造・販売。

株式会社アイシン
・設立 1965年 8月31日
・事業内容 自動車部品、住宅設備機器、エネルギー機器、福祉機器の製造・販売
・資本金 450億
2021年4月、中核企業であるアイシン精機、アイシン・エィ・ダブリュが経営統合し、「株式会社アイシン」として新たにスタート。

株式会社デンソー
・設立 1949年 12月16日
・事業内容 各種自動車用その他電装用品、空調設備、一般機械器具、電気機械器具の製造・販売
・資本金 1,874億5,700万円

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トヨタ紡織株式会社
・設立 1950年 5月15日
・事業内容 自動車用内装製品、フィルターおよびパワートレイン機器部品、繊維製品等の製造・販売
・資本金 84億円
アラコ、タカニチと合併し、内装品・自動車フィルター国内首位、内装品で世界4位。

トヨタ自動車東日本
・設立 2012年 7月1日
・事業内容 乗用車、商用車、ボデーおよび部品の製造・販売
・資本金 68億5,000万円
関東自動車工業・セントラル自動車・トヨタ自動車東北の3社が統合し、2012年7月にコンパクト車の専門集団。

豊田合成株式会社
・設立 1949年 6月15日
・事業内容 ゴム・プラスチック・ウレタン製品、半導体、電気・電子製品、接着剤等の製造・販売
合成樹脂、ゴム部品メーカー。内外装部品やエアバッグが主力。ゴムの新素材にも注力。

日野自動車株式会社
・設立 1942年 5月1日
・事業内容 トラック、バス、小型商用車、乗用車、各種エンジン、補給部品等の製造・販売
・資本金 727億1,700万円
トラック大手。海外はインドネシアが最大地盤。トヨタ車の受託製造や部品供給も行う。

ダイハツ工業株式会社
・設立 1907年 3月1日
・事業内容 乗用車・商用車・特装車および部品の製造・販売
・資本金 284億400万円
主に軽自動車、および総排気量1,000cc以下の小型車を主力とする自動車メーカー。

下記は製造業以外のグループ企業

豊田通商株式会社
・設立 1948年 7月1日
・事業内容 各種物品の国内取引、輸出入取引、外国間取引、建設工事請負、各種保険代理業務
・資本金649億3,600万円

東和不動産株式会社
・設立 1953年 8月17日
・事業内容 不動産の所有・管理・売買・貸借・受託管理、有価証券等への投資
・237億5,000万円

株式会社豊田中央研究所
・設立 1960年 11月9日
・事業内容 総合技術の開発、利用に関する各種の研究・試験・調査
・資本金 30億円

トヨタホーム株式会社
・設立 2003年 4月1日
・事業内容 住宅の技術開発・生産・販売・建設・アフターサービス
・資本金74億円

下請企業

1次下請け会社 6380社

1次下請け会社 上位業界

1.ソフト受託開発 296社
2.自動車部品製造 261社
3.金型・同部品等製造 225社
4.産業用電気機器卸 200社
5.労働者派遣業 186社
6.精密機械器具卸 138社
7.金属プレス製品製造 133社
8.工業用樹脂製品製造業 115社
9.金属工作機械製造 111社
10.機械設計 110社

2次下請け会社 3万5047社

2次下請け会社 上位業界

1.ソフト受託開発 1,525社
2.産業用電気機器卸 1,201社
3.金型・同部品等製造 988社
4.機械同部品製造修理 912社
5.金属プレス製品製造 875社
6.製缶板金業 869社
7.鉄鋼・同加工品卸 842社
8.機械工具卸 822社
9.工業用樹種部品製造 725社
10.自動車部品造 633社

トヨタ自動車グループ(主要関連会社・子会社15社)の下請け企業は、全国で合計4万1427社。業種細分別に見ると、一次下請けでは、
1位が「ソフト受託開発」2位が「自動車部品製造」二次下請けでも
「ソフト受託開発がトップ」
出典:TDB 2021年調査

全国の製造業企業数が約66万社。トヨタ「ケイレツ」の規模の大きさがわかりますね。
また、1次請でソフト受託開発が自動車部品製造を抜いて首位になったことや、
5位に労働者派遣業があることも、CASE化や日本の労働市場変化の一つの指標ではないでしょうか。
同社グループ企業概要、1次、2次下請け企業の構造を知ることは日本の製造業界の構造を知ることにつながります。

■トヨタ自動車サプライチェーンの要「二豊会」を知る

二豊会の歴史

1939年 11月
協力会の発足
―第1回「トヨタ自動車下請懇談会」が東京の蔵前工業会館で開催され、協力会が発足した。今日の協豊会のルーツとされる。なお、この時参集した会社は18社。

1943年 12月
協豊会の発足
―単なる懇談会からの脱皮を目指して、協力会は発展的に解消し、新たに「協豊会」が発足した。会長には、当社副社長赤井久義が就任。当時は太平洋戦争中のため、資材供給・人手の確保など、協力工場だけでは片づけられない問題が多く、当社との連携強化の必要性が急激に高まった。

1946年 7月
東京協豊会の発足

1947年 1月
関西協豊会の発足

1952年 10月
系列診断
労働争議から朝鮮特需と世の中が大きく動く中、協豊会会員会社においても近代化・合理化の必要性が増大し、中小企業庁より工場系列診断を受けた。結果は、中小企業庁長官表彰8社、知事表彰21社、通産局表彰2社と、大きな成果を収め、その後の発展の基礎固めとなった。

1957年 4月
関東協豊会の発足
東京協豊会を「関東協豊会」に名称を変更。

1962年 4月
精豊会の発足
自工の増産・新型車発表などが相つぐ中、型・冶具・ゲージメーカーの技術・経営体質の向上などを目的として「精豊会」が結成された。結成時の会員会社は19社で、会長には(株)高津製作所社長 高津末広が就任。

1962年 11月
栄豊会の発足
元町工場の建設を契機として、建設・電気配管工事業者により結成されていた豊援会が「栄豊会」として再結成され、会員相互の技術・経営体質の向上に向け新たなスタートを切った。結成時の会員会社は24社で、会長には池田工作所社長 池田佐助が就任。

1976年 5月
トヨタ生産方式研修会
低成長時代への対応が急務とされたこのころ、ニ豊会内でも、会員各社の企業体質の改善に向けさまざまな活動が展開された。この活動の中で関東・関西協豊会では、トヨタ自工副社長 大野耐一を講師とし「トヨタ生産方式研修会」を行った。

1983年 4月
新生栄豊会の発足
厳しい環境に対応すべく、会員相互の有機的結合の強化拡大を図って、設備メーカーで構成される「旧栄豊会」と、型・冶具・ゲージメーカーで構成される「精豊会」が統合され、新生「栄豊会」が発足。会員数は62社(旧栄豊会36社・旧精豊会22社・新入会7社・重複加入3社あり)で、会長には鬼頭工業社長 鬼頭一雄が就任。

この時、現在の「冶工具部会」・「施設部会」・「機械部会」の三部会体制となった。「二豊会」という場合、この「栄豊会」と「協豊会(東海・関東・関西)」を指す。既に共通的な行事は合同で実施しており、両会を統合することにより、1.さらなる会活動の効率化、2.原価・品質の両機能を中心した会活動の一層の充実、3.会の自主的活動運営力の強化を目指した。

1986年
国際化に向けた一歩
協豊会で初の外国資本メーカーである「日本ミシュランタイヤ」が関東協豊会に加入し、国際化に向け新たな一歩を踏み出した。

1999年 4月
協豊会一元化
協豊会総会にて、新「協豊会」設立が承認され、関東・東海・関西の3地区に分かれていた協豊会が一元化された。趣旨は「会員会社の課題認識を共有化し、当社と部品メーカーの総合力を一層強化するため、3地区で重複・分散している協豊会の活動を一元化し、よりグローバルでオープンな会運営への刷新を図る」である。そのため、会員資格を明確にし、協豊会への入会をオープン化した。

トヨタは調達の為の下請企業を組織化し、参画企業の課題認識を合わせるなど、
同社を中心とした経済圏を構築しています。
現在40,000社以上になる「ケイレツ」の礎は1世紀近い歴史がつくっており、
日本の自動車産業を支えているのが分かります。

 

協豊会、栄豊会の違いは?
協豊会
・部品のサプライヤー
役割:完成車をジャストインタイムで造るサプライチェーン
1.アッセンブリのサプライヤー
2.自動車部品のサプライヤー
3.自動車部品を作る部品のサプライヤー
1.→2.→3.をジャストインタイムで繋ぐサプライチェーンを協豊会で囲いこんでいる。
栄豊会
・設備のサプライヤー
役割:ジャストインタイムを実現する設備(製造ライン)の最適化、設備を自動化する
・ボディー
・ユニット
・物流
・施工 等
ジャストインタイムとは?
「必要なものを、必要なときに、必要な数だけつくる」という発想から生まれたジャストインタイム(JIT)。
物や時間などの流れを細かく管理し、徹底的に生産の効率化を進めるという特徴があります。
トヨタ自動車が導入した生産方式で、現在では日本のみならず世界の実業界・学界でも取り上げられてきました。
ジャストインタイムは後工程引取方式であり、前工程から製品・部品を必要な時に必要な量だけ引き取ります。
そして前工程では、引き取られた後にすぐに部品を生産するのではなく、後工程から指示がある分のみ生産することで在庫の無駄を省くのです。
このような生産の仕組みによって在庫の圧縮や生産コストの最小化を目指す。
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■まとめ

世界最大の販売台数を誇るトヨタ自動車。
その躍進を支えているのは二豊会を中心とした、「ケイレツ」企業群でした。
同社が自動車産業に与える影響を予測するのに、サプライチェーンの理解はかかせません。
自動車産業に関わるあなたのお役に立てれば幸いです。

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この記事を書いた人

IT業界で製造領域に携り7年

業界知識や課題、採用、転職、お金にまつわることなど、
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